日本地域看護学会第27回学術集会

日本地域看護学会第27回学術集会

ご挨拶

地域看護のソーシャルイノベーション

―地域社会の包容力を高める看護の挑戦―

JACHN27にいな

日本地域看護学会第27回学術集会は2024年6月29日(土)・30(日)の2日間、杜の都・仙台で行います。東北地方初開催となる学術集会のメインテーマには、『地域看護のソーシャルイノベーション―地域社会の包容力を高める看護の挑戦―』を掲げます。

イノベーションには、物事の新しい見方や捉え方、新たな視点の入れ方や思考の切り口をさす新機軸と、新しいアイデアや技術から社会的意義や価値を生み出す活動の二つの意味があります。現在、産学官の連携を通じて最先端技術をあらゆる社会生活に取り入れ、新たな価値を創造し、誰もが快適で活力に満ちた質の高い生活を送ることができる人間中心の未来社会を実現しようとする日本の未来社会Society5.0構想が動き出しています。IoTですべての人とモノがつながり、人工知能やロボットなどの技術を用い、年齢や障害を問わず社会参加を可能にし、少子高齢化や過疎化の地域課題の克服に挑む社会の変革(ソーシャルイノベーション)を通じ、希望を持てる社会、世代を超えて互いに尊重しあえる社会、一人一人が快適に活躍できる社会をつくろうとしています。

このような未来社会をめざす動きのなかで、地域看護はどのような新機軸をもち、どのような社会的意義や新たな価値を生み出す活動を展開できるか、未来志向で議論する必要があります。2020年に1億2615万人だった日本の総人口は、50年後8700万人に減少すると予測され、静かなる有事といわれています。国家資格を有する看護職は、最先端技術を誰も取り残さない包容力の高い地域社会づくりに利活用し、自身が所属する地域コミュニティにおいて人々の生活の質とケアシステムを保障する責任があります。これから、最先端技術を駆使した人間中心の包摂的コミュニティの時代が本当におとずれるのか、人々の健康の保持増進、生活の質の向上をめざし、地域でケアすることを専門とする私たちのソーシャルイノベーションにかかっています。

人口減少・超高齢少子社会の先進地域である東北地方では、急速に進む過疎化や自治組織の終活など人々の生活の質にかかわる課題に住民とともに向き合い、新しい考え方や発想を基に新たな価値を創出する諸活動が展開されています。第27回学術集会では、これらを共有し、地域社会の包容力を高める看護の挑戦について発展的に議論します。1日目は講演等から地域看護の新機軸と活動を共有し、2日目はオンラインセッション(ラウンドテーブル形式の口演発表)で新たな価値創造に向けて関心領域のグループで意見交換を行います。

学際的交流を通した参加者間の学び合いがそれぞれの立場で実践、教育、研究を推進する熱量となり、個人の気づきや閃きが連鎖して地域看護学の新たな価値創造の活動を生み出す“地域看護のソーシャルイノベーション”の原動力になることを祈念します。

日本地域看護学会第27回学術集会
学術集会長 大森 純子
(東北大学大学院医学系研究科 教授)

日本地域看護学会第27回学術集会
副学術集会長 浦山 美輪
(東北大学病院 副院長・看護部長)